自分の娘やその家族、それを取り巻く困難まで、全てを受け入れ、支えようとする琉偉を見て、根負けしない方が無理だった。

琉偉になら、全てを預けられる、そう思った。だから父は、琉偉に、土地や建物の権利書を託した。

それに、もう一つ、父には気になる事があった。それは、飛天旅館の相馬だ。

何度か会い、相馬を見てきたが、あの紳士的な態度に裏がある。紳士の皮を被ってると思っていた。

相馬に大事な娘を渡したくない。

相馬から、娘を守ってくれるのは、琉偉だけだと思った。

『旅館はどうなっても構わない。ただ、娘を…雪だけは、守って欲しい』

帰り際、父は、琉偉にそう頼んだ。だが琉偉は、首を振った。当然、父は驚き琉偉を凝視する。

『雪さんは、何があっても守ります。ですが、旅館も、守ります、私の全てをかけても。だから、どうなってもいいなんて思わないでください。雪さんが自分の身体を張って守ろうとした旅館なんですから』

琉偉の言葉に、父は琉偉に深々と頭を下げた。