彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜

その時だった。琉偉の携帯が鳴ったのは。
「…マーだ。ちょっと、話してくる」

そう言うと、琉偉は外に出て行った。

部屋の中に残った冬馬と雪。

「…姉さん、あの人の事、どう思ってるの?」
「…え?」

「…あの人、あんな大企業の社長なのに、それを鼻にもかけず、姉さんの為に動いてる。それってさ、すっげー愛されてんじゃないの?」

「…」

…雪も、そう思う。琉偉の想いが、ヒシヒシと伝わってくる。それでも琉偉に飛び込めないのは、恋というものに臆病になっているから。

「…姉さんだって、本当は」
「…好きよ。胸がしめつけられるほど」

「…そんなに好きならなんで言わないんだよ?」
「…そう簡単に気持ちが伝えられるような相手じゃない事くらい、冬馬にもわかるでしょう?」

困ったように微笑んだ雪を見て、冬馬は言葉を失った。

「…大人の事情なんて、俺には分かんねえ」
「…冬馬、こんな情けない姉でゴメンね」
雪の言葉に、冬馬はふんと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。


「…どうした?」

そこへ、琉偉が部屋の中に帰ってきた。