「…九州、関東、北海道に、一気に3店舗ホテルを作る事は決まっている。関東、九州は、もう建設を開始してる。北海道は、…白井さんの実家の旅館に、白羽の矢を立てた」

「…え⁈」

「…老舗旅館の白井さんの実家は、地元に根強い人気がある。県外からの顧客だってリピーターもいるほどだ。今回、海外に向けての集客も考えてる。経営のやり方一つで、あの旅館はまだまだ立て直せるんだよ。いくらみんなの為とはいえ、見ず知らずの男と、結婚なんてする必要はないんだ」

…あぁ、なんて自分はバカなんだろうと、雪は思った。さつきは、琉偉に相談しろと言っていた。それは、新事業の事を知っての事だったんだろう。

それなのに、相談一つせず、勝手に判断して、話を進めた。

「…でも、もう遅い。…相馬さんに、イエスと答えてしまったんです。ですから、黒澤社長の厚意を受ける訳には行かないんです」

「…そう言うと思った」

雪の言葉に、困ったように笑った琉偉が溜息交じりにそう言った。

「…今、飛天旅館に、マーが行ってる」
「…え⁈」

「…飛天が動き出したら、こちらも身動きが取れなくなるから。そうなる前に、白井さんとの話を、全て白紙に戻してもらう為に、マーが話をしに行ってる。…素直に頷かないだろうけどな」