「…姉さん、俺はまだ今年一杯は大学生だよ。でも、経営に関しては、散々学んできたつもりだよ。頼りないのはわかるけど、相談くらいしてよ。今時政略結婚なんて馬鹿げてる」

「…でもね、冬馬、あの旅館は、今年一杯もたないわ。助けてもらわないと、潰れてしまう。立て直してから、冬馬に譲るつもりだったの」

「だからって、なんで好きでもない男なんかと結婚する必要があるんだよ?姉さんはいつもそうだ。何でもかんでも一人で抱え込んで、勝手に一人で決めちまう。そんなことするくらいなら、あんな旅館潰れればいいんだよ!」

「冬馬‼︎」

「…白井さん、この話、全て俺に託してはくれないか?」

「…え?」

冬馬と雪の間に割って入るように、琉偉が言葉を発した。雪は驚いて琉偉を見る。

「…うちの会社が今度新たに参入した仕事内容が、ホテル部門なんだよ」

琉偉の言葉に目を見開く。新しい部門に参入した事は知っていたが、それが何の事業なのか、雪は知らされていなかった。

…しかも、その事業は全て、雪の為だったなんて、琉偉の口から言えるわけがなかった。自分の想いが、雪の重荷になるのだけは避けたかったからだ。