雪は驚き顔のまま、琉偉と冬馬を交互に見る。…無理もない。2人は初対面なのだ。そんな2人がそんな深い話をするのか?っと言うか、雪が今置かれている状況を、琉偉が知っているのか?

「…とにかく、家ん中入れてくれる?道端で話すような内容でもないだろ?」

「…え、あ、うん」

冬馬に言われるまま、雪は、琉偉と冬馬を部屋の中へ招き入れた。

「…お茶は?」
「…そんなものいいから、なんで勝手に話を進めたのか聞かせてくれる、姉さん?」

テーブルを挟んで、雪の向かい側に、琉偉と冬馬が座って雪を凝視している。

雪は体を小さくして困惑顔。

「…冬馬、あんたは一体どこまで知ってるの?」

「…大体の話は父さんから聞いてる。姉さんが、変な行動を取る前に、止めろって突然電話してきたんだよ」

「…黒澤社長、…冬馬とはどこで?…それから、冬馬が全部聞いたって言ってましたけど、どこまで内容を把握してるんですか?」

恐る恐る尋ねれば…

「…冬馬とは、今日が初対面だよ。白井さんの家の前で偶然会って、白井さんの弟だって聞いて、色々話した。それから、俺が知ってるのは、白井さんの実家の旅館が、危ない事、飛天旅館が助ける代わりに、白井さんが、相馬と結婚するという条件を出してきた事…それから、今日、旅館の為に、結婚を決めてきた事」

「…そんな事まで」

雪はただただ驚くしかない。旅館の事や、条件の話を、さつきに話したから、知る事は出来ただろうが、今日、結婚を決めた事まで知ってるとは。

…だが、最後の言葉は、ただの推測でしかなかった。が、雪の反応でそれは間違いではなかったと、琉偉は溜息をついた。