…話を終え、電車で自宅の最寄駅に降りた雪は歩きながら、自分の決めた事を両親に話すべく、電話をかけた。

「…もしもし、お母さん?」
『雪なの?』

「…うん、今日ね、飛天旅館の相馬さんに会って来た」
『…そう、それで?』

「…私、相馬さんの申し出を…冬馬?」
『…え?冬馬がいるの?ねぇ雪?ゆ…⁉︎』

話の途中だと言うのに、目の前にいる弟、冬馬が、怒った顔で雪から携帯を取り上げると切ってしまった。

「なっ⁈何するのよ、冬馬‼︎」

雪も怒った顔で、冬馬に言い返した。

「…何するの?じゃねぇよ!」

弟とはいえ、雪よりはるかに背の高い冬馬は、上から雪を怒鳴る。雪は、少し怯んで、冬馬を見返した。

「…実家の旅館は、俺が継ぐんだよ!勝手な事ばっかりすんなよな」
「…冬馬、何言って…」

「俺がガキだからって、何も知らないとでも思ってんのか?…って、全部知ったのは、あの人のおかげだけどな」

そう言って振り返った冬馬の目線の先には、これまた不機嫌な顔の…

琉偉が居た。