…次の日、雪は何時ものように出社する。

「おはようございます、課長」
「…おはよう、白井さん、実家の方は大丈夫だったの?」

「…えぇ、大丈夫です。あの」
「…ん?」

「…今日、仕事が終わったら、課長のお宅へ伺ってもよろしいですか?」
「別に構わないよ。さつきも、今日は家にいるから」

そう言って微笑む課長を見て、雪はホッとしたような顔をした。

「…白井さん」
「はい?」

「…いや、なんでもない」

課長はそう言うと、社長室に向かった。

…今日は1日、社内会議が詰まっていた。定時を過ぎても、会議が長引き終わらない。

「白井さん」
「…なんですか?」

「もう、上がって良いよ」
「…でも、まだ会議が」

「…大丈夫。私がいるから。さつきには連絡してある。さっきから、何度も、白井さんはまだ終わらないのかって催促のLINEが来て煩いんだ」

そう言って苦笑する課長を見て、雪は少し笑った。

「課長命令です」
「…奥様には頭が上がらないんですね」

「…秘密ですよ?…上司がこんなんじゃダメでしょ?」

課長の言葉に、雪はクスクスと笑いながら、頷いた。