やっと大人しくベッドに入って横になった琉偉を見て、雪はキッチンに向かうと卵がゆと、リンゴを切って琉偉の元へ。

食べ始めると、食欲が出てきたのか、ペロリと全部平らげた。薬を飲ませると、食器を片付けた。

「黒澤社長」
「…」

「…黒澤社長?」

名前を呼んでも、返事はなく、でも、雪をジッと見つめている。

「…あの?」

困った顔をしながら問いかければ。

「…また、黒澤社長って言った」
「…ぇ…ぁ」

「ここは、会社じゃないんだけど」
「えー、あー、そうですねー…えっと、琉偉さん」

雪の言葉に満足そうな顔をした琉偉。

「…なに?」
「…少し具合も良くなってきたみたいだし、私は帰りますね」

「…なんで?」
「…なんでって言われても…昨日からずっと琉偉さんに付き添ってたんですよ。着替えもないし、お風呂も入ってないし」

そう言って苦笑する雪。

「…じゃあ、ここで入れば?」
「い!嫌ですよ!着替えがないって言いましたよね?」

焦って言うと。

「…じゃあ、今から仕事する」
「〜〜〜〜〜ッ‼︎駄々っ子みたいな事言わないでください!」

と言い返すと、琉偉は笑った。