…雪のアパートに着き、車が停車する。

「…ありがとうございました」
「…あぁ」

雪は琉偉の顔を見る事なく降りようとする。でも、その動作は、琉偉の手によって止められた。

「…あの」
「…白井さんの事、好きだから」

突然の告白に、驚いて琉偉の顔を見た雪。

「…白井さんが入社して、秘書課に来た時からずっと…」
「…社長」

「今日、一緒に過ごして、益々白井さんが好きになった。だから、俺の傍にいて欲しい…心からそう思う」

「…私は」

「…でも、白井さんは、彼の傍にいたいだろ?」

「…ぇ?」

「…鮫島義人」

義人の名前が出て、雪は尚更驚いた。でも、だからこそ、聞かなきゃいけないと思った。

「…黒澤社長、鮫島さんと私を別れさせたのは貴方ですか?確かに私は鮫島さんがSKファンドのCEOだって知らなかった。でも、本当に愛してた…」

『愛してた』その言葉に、琉偉の顔が歪む。

「…どうなんですか?」

…しばらく黙っていた琉偉だったが、その重たい口を開いた。

「…そうだよ。鮫島と白井さんを別れさせたのは俺だ」

そうであってほしくないと願っていた。仕事のためなのか?そんな事はわからない。でも、愛し合っていた2人を別れさせるなんて、許せる事じゃなかった。

「…社長のバカ」

雪は下唇を噛み締めて、車を降りると、部屋に入って行った。