琉偉本人に聞けば、演技なのか、違うのか、わかる事だが、義人の言う通り、琉偉が黒なら、それも又、演技される可能性もある。

コーヒーを淹れ、雪は再び社長室に向かう。ドアをノックして中に入ると、定位置にコーヒーを置いた。

「…ありがとう。…白井さん、今日の予定は?」
「…はい、今日は、午前中に植田商事の常務がお見えになります。その後は、しばらく書類審査をしていただき、午後は、ただ今建設中の支店の視察が入っております」

「…そう、今日の同行秘書は?」
「…私が行く予定ですが、課長の方が宜しいですか?」

「…いや、白井さんでいい。今日は定時に終わりそうだな」
「はい、急な案件が入らない限りは、定時に終わります」

「…白井さんの定時後の予定は?」

その質問に、少し驚いたような顔で、手帳から顔を上げた雪。

「…予定が聞きたいんだけど?」
「…いえ、特に予定はありませんが?」

「…じゃあ、その後の予定は、俺との時間をくれるか?」

「…えっと…」
「話したい事がある」


「…話したい事、ですか?」
「…とても大事な話だから」

『大事な話』

その言葉で、雪は頷いてみせた。

もしかしたら、琉偉の真意がわかるかもしれないと思ったから。

雪はどこかで、琉偉は白であって欲しいと願っていた。