彼は黒で彼女は白〜俺様社長の甘い罠〜

雪の言葉に、琉偉は目を輝かせる。

「おせち料理なんて、もう何年も食べてないな。あ、でも、お邪魔してもいいの?」

大人な琉偉と、子供みたいな琉偉が入り混じって可愛いなぁと雪は思って、クスクスと笑う。

「いいですよ。狭い部屋ですけど、あ、さっきも言いましたけど、全部が手作りと言う訳じゃありませんからね?」

と、慌てたように言う雪を見て、琉偉は嬉しそうに頷いた。

「いいよ、全然。一人でお正月を過ごすより、全然いい」

「…琉偉さん…ご実家には帰らないんですか?」

少し不安になって問いかけてみた。

「…両親とは縁を切ってる。元々愛情の欠片もない親だったから、縁を切る事くらいどうって事ない。まぁ、仕事では顔をあわせるけどな。…俺はいつもどんな時も、一人だよ」

そう言って微笑んだ琉偉の笑顔は、とても切なげで、雪は胸を締め付けられた。

「…琉偉さん」
「…ん?」

「…琉偉さんは一人じゃない」
「…え?」

「…私が傍にいます。お仕事以外、何のお役に立てるかなんてわからないけど、傍にいますから、いつもこうやって、笑ってください」

そう言って優しく笑う雪を、琉偉は静かに抱き寄せた。

「…ありがとう」

その言葉は、心からの言葉だった。