185センチの高身長。鼻筋が通り、少し大きめな瞳に二重。芸能人に例えるなら、小栗旬のような顔立ちで、歳の割に若く見える。

そんな黒澤社長だが、人前ではあまり笑顔を見せる事もなく、いつも険しい顔をしている。

「…社、長。何を」

震えた声で呟いた雪はどうしていいかわからず、ただただ困惑する。

「…泣いてるから」

低くでも、優しい声が雪の耳に聞こえた。

「…す、すみません、気になさらない「静かに」

雪が言い終わらないうちに、黒澤社長の声が重なった。

雪は思わず口を噤む。すると黒澤社長は抱き締める腕に少し力を込めた。

「…泣きたい時は、泣けばいい」
「…あ、の」

「…ん?」
「…この状況に驚き過ぎて…止まっちゃいまし、た」

正直に答えれば、ちょっと驚いた顔をした黒澤社長だったが、直ぐにクスクスと笑い出した。

…秘書課に勤務し始めて、そろそろ三年。それでも初めて黒澤社長の笑い顔を見た雪は、豆鉄砲をくらったような顔をして、更に黒澤社長は笑い出す。

あんまり笑うので、雪もつい、笑ってしまった。

「…あ、笑った」
「…ぁ、」

「いいね、その顔の方が」

そう言って、優しく微笑んだ黒澤社長に、雪は涙をぬぐって、微笑み返した。