『明日の10時に迎えに行くから』

琉偉の言葉に頷いて、雪は帰宅した。こんな時間ではあったがザッと家の中を掃除して簡単なおせち料理を作って、お風呂に入って、お酒を飲みながら、紅白歌合戦を見て、いつの間にかコタツの中で眠ってしまって…

就職してから毎年年越しはこんな感じで過ごす雪。一人でも必ず掃除と料理はちゃんとしなさいと、母に言われ、雪はそれを忠実に守っているのだ。

『花嫁修業』を兼ねてるらしい。

雪の母は、雪が小さい頃から家事炊事の手伝いを必ず毎日させてきた。一人暮らしはもちろんだが、突然の結婚にも、雪が恥をかかないようにと。

もう26歳になる雪。一体いつ結婚できることやらと、雪ですら諦めているのだが。

…年の明けた午前9時。付けっ放しのテレビから聞こえてきた時刻を知らせる声に、雪は飛び起きた。

「ヤバッ‼︎社長が迎えに来るんだった!」

コーヒーを流し込み、バタバタと着替えを済ませた雪。そこへタイミング良く、携帯が鳴る。

『あけましておめでとう』
「…あけましておめでとうごさいます」

琉偉からだった。

『もう出られる?』
「はい…なんとか」

雪の答えに、琉偉はクスクスと笑っている。…寝坊したのがバレバレだ。