目を見開く雪を見て、琉偉はフニャッと笑い。

「…冗談だよ。白井さんがベッドで寝て。俺は男だから、ここで十分」
「…いいですよ」

その言葉に、今度驚かされたのは琉偉の方だった。

「…黒澤社長がちゃんとベッドで寝てくれんるでしたら」

囁くように絞り出した声で言って、雪は琉偉を立たせると寝室に連れて行く。無理やりベッドに入らせた雪。それを見届け、自分もベッドに潜り込んだ。

…。

でも、琉偉は、雪を抱きしめることなく背を向けてしまった。

その行動に、なんだか拍子抜けした雪だったが、間も無くして聞こえてきた規則的な寝息にホッと胸を撫で下ろした。

そして、冴えていた目も、微かに感じる琉偉のぬくもりに安心してウトウトし始めた。

…ふと、温かいものに包まれた気がしたが、夢うつつの雪は、そのまま眠ってしまった。

暖房を入れてても、なんだか底冷えする。雪は、そのぬくもりにすり寄って安心しきった顔で眠っているその寝顔を優しく撫でられていることなど知らない。