「…琉偉さん」
「…少しだけ」
「仕事中です」

「…零士と」

そこまで言って、琉偉は口を閉じた。

「…社長、私には貴方だけです。何か心配なさっているみたいですが、ただの取り越し苦労になりますよ」

そう言うと、雪は琉偉にそっと口付けて微笑むと社長室を出ていった。

ドアを閉めて、雪はそのドアに背を持たれかけた。

零士と。

その言葉で、雪は全てを悟った。

琉偉は、零士との仲を心配しているんだろうと。

雪には、琉偉だけなのに。

どうしたら、琉偉の不安を取り除けるのか?

…こんな時に、明日から10日間、琉偉は、課長と海外に出張が決まっていた。

…そうだ。

雪はいいことを思いついた。

琉偉が帰ってくる日が、琉偉の誕生日だった。

その日は、二人でバースデーパーティーをしよう。

そう思うと、雪はワクワクした。