雪は一気に気が抜けて、足がカクンとなった。

琉偉は、ハッとしてそれを受け止める。

「大丈夫?雪、零士に何された?」
「友人ですって、手を差し出したから、握手かなって思って、手を出したら、無理やり引っ張られて、車に乗せられそうになって。でも、琉偉さんが来てくれたから」

そう言うと、困ったような笑みを浮かべて。

「…零士が友人ですって?」
「そうです、よね?」

「友人なんかじゃない。零士は俺の義理の弟だよ」
「え?!」

初耳だった。

琉偉の、兄弟は、さつきだけだと思っていた。

「海外で、仕事してたんだけど、今年から、黒澤で働くことになった。零士は、俺が嫌いだから。嫌がらせのつもりだったんだと思う。ごめんな、雪」

…琉偉の両親は再婚同士。お互い連れ子がいて。

零士は、母親の連れ子だそうだ。

さつきにはなついたが、琉偉には、全くなつくことなく、会えば憎まれ口しかたたかないと言うほど、犬猿の仲。

そう、さつきと琉偉の、本当の不安要素は、零士だったのだ。