琉偉は、空港のロビーで、思わず振り返った。

やはり、強引でも、雪を連れてくれば良かったと後悔した。

たった数キロ離れただけなのに、こんなにも雪が恋しくてたまらない。

…その時だった。

東京行きのアナウンス。

琉偉は、ため息をつき、搭乗ゲートに向かって歩き出した。

チェックを済ませて、中へと進んでいく。

「…長」
「」

「…社長」
「…」

「黒澤社長」

琉偉は、足を止めた。

「…琉偉さん、待って!一緒に行きます!」

大好きな人が、自分の名前を呼んでくれた。

琉偉は、声の方に向き直ると、着物姿の雪が息を切らせて、搭乗ゲートを抜けた。

「…間に合った」
「着物のままで、来たのか?」

「…ぁ、慌てていたので」

気恥ずかしそうに笑って、雪は、琉偉から離れたが、琉偉は、雪の手をぎゅっと掴んで離さない。

「もう、逃がさない」

琉偉は、そう言うと、着物のままの雪を連れ、飛行機に乗った。

…数時間後。飛行機は東京に着いた。

空港には、社長専属の車が待機していて、二人で乗り込む。

「私は一度、本社に向かう。雪は、俺の家で、待っていて欲しい」
「あの、何か、お役に立てないでしょうか?」

雪の申し出に、琉偉は微笑んで、首を降った。

「家に帰った時、雪が待っていてくれると思うと、頑張れるから、待ってて」

「わかりました。美味しい料理をつくって待ってます」

本社に琉偉を下ろすと、車は、琉偉の自宅へ。

雪を下ろすと、車は本社に帰っていった。