3日目の朝、ようやく熱の下がった琉偉が、小鳥のさえずりで目を覚ました。

…右手が動かない。

琉偉は、自分の右手を、少し顔をあげて見てみると、一晩中看病していた雪が、琉偉の手を握りしめたまま、眠っていたのだ。

愛してやまない雪が、ずっと付きっきりで傍にいてくれたのかと思うと、たまらなくなって、眠る雪を、起こさないように、自分の寝る布団に寝かせると、雪を抱き締めて、また、目を閉じた。

…次に目を覚ましたのは雪だった。

いつの間に、琉偉の布団に一緒に寝ていたのか?

疑問に思いながら、ぐっすり眠る琉偉のおでこをそっと触ってみる。

熱は下がった。

そう思ったら、ホッとして、自然と笑みがこぼれた。

「…おはよう、雪」
「…もう、お昼過ぎてますよ?でも、おはようございます」

そう言いながら、クスクス笑う雪を、琉偉も笑みを浮かべると、雪を感じようと、抱き締める。

「ぁ」
「え?」

声をあげた琉偉を、不思議そうな顔で見た雪。

「風呂入ってないから臭いか。離れようか」

琉偉の言葉に、困ったような笑みを浮かべて、雪は言った。

「ずっと、熱があったんだから仕方ないじゃないですか?あ、でも、私、うなされてる黒澤社長の体を拭いて、着替えもさせたんですよ?だから、大丈夫です」

そして雪は、琉偉の胸に顔をうずめた。

琉偉は、少し驚いたように、雪を見下ろす。

「私、黒澤社長の匂い好きです」

その言葉に琉偉は笑って、ぎゅっと抱き締めた。