…次の日の早朝。琉偉はすでに、誰よりも早く出社していた。本当なら、昨日のうちに、仕事を終わらせるつもりでいた。が、昨夜、泣いてボロボロの雪を放っておけなかった。

…167センチ、モデル体型で、ストレートの黒髪が良く似合う、白い肌の美人な雪。誰もが羨むその美貌を持ち合わせる彼女が、あんな薄暗いオフィスの中で、独りで泣いていた。

仕事も出来て、白黒ハッキリさせる彼女は、上司、同僚、後輩、から頼りにされる完璧な人だ。

そんな雪を誰が放っておけただろうか?

堪らなくなって抱きしめれば、細いその体を壊してしまいそうで、優しく抱き締めた。

…初めてこんなにも近くに雪を感じた。

何もかも完璧だと思っていたが、本当の雪は、表情豊かで、優柔不断で、容姿とは正反対で可愛らしい。

そんな雪を泣かせた理由。…こんなクリスマスの夜。理由は一つしか思いつかない。

それは、…彼氏か。

聖夜の夜に、彼女に別れを告げたであろうその男に憤りを感じずにはいられなかった。

泣いてる雪を、なんとか笑顔にしてやりたい。

そう思った琉偉は、食事に誘うという手段に出た。…最初は乗り気でなかった雪だが、琉偉が笑えば、雪も笑ってくれて…気がつけば、雪ではなく、琉偉の方が、救われた気がした。