…琉偉に、好きだと言われたことはあった。けれど、それからはただの一度も聞いていない。

沢山、沢山、雪を助けてくれた琉偉だが、今も雪を好きなのかなんて、わからない。

雪は、琉偉への気持ちを絶つつもりで、北海道に来たのだが、消えるどころか、益々想いは強くなってしまった。

その想いを、拒絶されるのが怖い。

恋に臆病になってしまった雪に、想いを伝える術はない。

「…冬馬が旅館に帰ってくるまでは、まだここで働きたいのですが…」

逃げていても仕方がないのは分かっていたが、そう言うしかなかった。

「…そう、それじゃあ仕方ながないわね。あ、でも、一つだけ私のお願い聞いてくれる?」

「…お願い、ですか?」

「…ちょっと耳かして」

…一体どんなお願いをしたのか、雪はおねがいを聞くか聞かないか、ギリギリまで悩むはめになってしまった。

…さつきと課長が帰ってからも、悶々とした日々を過ごした。

…その間に、何度も、さつきたちの子供達から、電話が来て、終いにはお手紙までが届き、雪は、お願いを聞かなくてはならなくなった。