「…白井さん!!」

雪の名を呼び、駆け寄ってきた琉偉は、ひしと雪を抱きしめた。

無事だった事に、ただただ安堵しながら。

琉偉とは全く逆の反応を示したのは雪。

こんな人前で、突然抱き締められて、あたふたする。

「…く、黒澤社長、人、人が居ますから!とりあえず離してください」

「…まぁまぁ、もう少し、そのままでいて差し上げてください。本当にとても心配してたんですよ?」

そう言って、優しい笑みを浮かべたのは、課長。

「…で、でも」


あたふたしながらも、なんだか嬉しそうな雪の顔を見た相馬はやはり、自分ではダメなんだと痛感して、悲しげな顔を浮かべた。

そして。

「…雪さん」

相馬の声に顔を向けた雪。

「…これまでのこと、本当に申し訳ありませんでした。全ての罪は、この身をもって償います」

「…相馬、さん?」

言葉の意味が理解できない雪は、それ以上、言葉がでない。

「…黒澤社長…雪さんの事、旅館のこと、よろしくお願いします。飛天グループが、何かあれば、お手伝いさせていただきます」

「…相馬さん、もしかして」

相馬のせんとすることが分かった琉偉は、真っ直ぐに相馬を見た。

相馬は困ったような笑みを浮かべ、琉偉に、深々と頭を下げると、車に乗り込み、その場を去っていった。