離れた唇。眼を閉じる間もないほど一瞬の出来事で、雪は放心状態。

そんな雪を見て、琉偉はフッと笑った。

「…また明日」

そう言うと、窓は閉まり、車は走り去った。

それでもまだ、雪はその場から動くこともできず、走り去った車の方を見つめていた。

…今のキスの意味は?

…大体、こんな日に、何故自分を誘ったのか?

雪には到底理解できるものじゃなかった。

「…雪」

寒いと思ったら、また雪が降り始めた。WhiteChristmas、その名の通り、街は真っ白で、イルミネーションが更に映えた。

最愛の彼からの突然の別れ。しかし、ドン底の雪を救い出したのは、他の誰でもない。黒澤琉偉だ。

今迄、ただの一度も、『男』として意識などしなかった相手からのキスに、動揺は隠せない。

そんな琉偉を、一度意識してしまえば、恋に落ちることなど、時間の問題だった。