「なりたい自分になる、叶えるです」

「箱崎は仕事を通して、どんな編集者になりたい?」

「読者が求めている情報や喜んでくれる特集を企画して、正確にそれを伝えられる編集者になりたいです」

「その企画だけど、通らなかった理由考えた?」

首を横に振った。企画書を出して返されたとき、「全然ダメ」と言われただけで具体的なアドバイスをもらえなかったんだ。

「何回も読んだことのあるような無難な企画だったから」

「……」

「別に冒険しろ、斬新な企画を考えろとは言わない。雑誌の軸からぶれたものを載せても仕方ないから。
たださ、編集者って、やっぱり自分の思い入れが強い記事をつくったほうがいいものができるんだよね。
でもそれは、ただ単に好きなだけではダメ。
なぜ今やる必要があるのか意味がないといけない。
箱崎の企画書は、無難に通りそうなのを書いてみたっていうのが見え見えだった」

雑に私に書類を渡した。ヒカリさんの企画書だった。読み返してみろということなのかと目を通した。

そこにはびっちり走り書きのような字で、メモが書いてあった。ヒカリさんが書いたものだろう。

「あいつのデスクから持ってきたんだけど」