「沙弥子さん、やりたいこといっぱいあるって言ってますからね。
仕事に対するモチベーションが凄いなって、いつも思っています。羨ましいくらい。私も見習わないとな」と、気付いたら、本音がこぼれてしまった。

仕事に自信がないと思っていることが、伝わったんじゃないかと不安になる。だけど先生は気にする様子もなく話を続けた。

「でも真野さんって、本当は別の情報誌の部署で働きたかったんでしょ?」

「えっ?そうなんですか?知らないです。その話」

「男性俳優とかアイドルとかのインタビュー記事を扱ってる感じの雑誌をやりたかったとか言ってたけど。
自分の手でイケメンを発掘して世に出したいんだって、力説されて何言っていいかわかんなかったけど」

「へえ」

私より、先生のほうが沙弥子さんのこと詳しいこともあるんだ。少し驚いた。

それにしてもと思う。この前もだけど、先生って沙弥子さんの話になると、饒舌だ。気に入られているんだな、沙弥子さんって。

「まああの人、面白いよね。打ち合わせのときいつも話、脱線しまくるし。いつも何か面白いこと考えてる人なのかって思うんだよね。
話したいことが沢山ある人ってそんな感じがする」

「……そうですね」

「だから、今の部署に配属されたときがっかりしたんだって。
女の子のモデル見てもつまんないしって。
で、どうやったら自分が面白く働けるか想像したって言ってた。
つまらないと思ったことでも、楽しく働けば、楽しい道を切り開くことができるんじゃないかって言ってたけど」

「沙弥子さんらしいですね」

そういうと、なぜか胸が火傷でもしたみたいに、ヒリヒリするような感覚を覚えた。