その言葉に続きがあるような気がして、待った。だけど先生は思い出したような顔をして、「そうだそれより」と、私の腕を引き「続き、しよ」と、キッチンへと向かわせた。

固まったチョコレートを切って、ココアパウダーをまぶしていると、私の肩越しから覗くような形で先生が見おろした。

「……へえ。こうやって出来るんだ」

「食べます?」

「あ、俺、チョコ食べれないんだ」

「……え」

そういうと、先生は少し気まずそうに、「ひとつくらいなら、食べれるよ」と言った。

「で、ですよね。作らせておいて食べれないわけないですよね。言い出しっぺなのに」と、嫌味で返すと真面目なトーンで言った。

「例えばだけどさ、この場面からなら、どういう展開を期待する?」

急な質問だった。編集者としての意見を訊いているんだろうけど、何分恋愛のスペックが物凄く低い。一緒にチョコを作って出来上がったっていうシチュエーション?想像すると、ほのぼのした雰囲気の仲良し二人が和気あいあいに、できたと喜んでいる絵しか浮かばない。

「食べさせるとか?」

言ってから恥ずかしくなった。ちょっと違う気がした。只のバカップルにしかならないかもしれない。

恋愛のセンスがないと気づかれたかなと、恐々 、先生を見た。

「そういうの期待するんだ」