「君なりに誉めてくれたんでしょ?」と、頬杖をついて微笑む。

その通りだけど、面と向かって言われると照れくさくて、「そ……そうなんです。伝わってよかったです」と、わざと胸を張って答えた。

でもちょっと機嫌よくなったように見えないこともない。

誉められるってやっぱり嬉しいものだよね。好感度が上がったかもしれない。

今日は、このまま先生を誉めまくって気分よく帰って頂くことにしよう。

「それで編集者の恋ということですけど……」

言いかけると、遮った。

「うん。まだ漠然としているんだけど、曖昧な男女の関係を書いてみたいと思っていたんだ。
女性は箱崎さんみたいに忙しい編集者で、相手のことは気になっているけど、うまく関係を築く時間がなくて、そのままにしている。
でもバレンタインをきっかけに関係を変えようとする。
さっき聞いた読者の意見と繋がれるような話が書けるかまだわからないけど、取り入れてみようかとは思うよ」

椅子に背中を預けた。

「そうすると今までの自分では書いたことないような話になる気がする。感覚として自分とかけ離れてるから、色々女の子としての意見も訊かせてくれたら嬉しいかな」

もしかして今、私、頼りにされた?好感度上がってる?と、自覚した。

「はい。口を挟ませてもらいます」

正直、嬉しくてそう答えていた。