「あります。先生の作品は今の連載を書く以前の話も幾つか読んだことあります。
確かに……すみません。
今回の作品に出てくる女性って普通っぽさがある子ばかりですよね。
そこが良く書けてるからこそ、余計に読者が共感しやすい部分が多くて、読みやすいのだと思っていました」

軽く頷いて言った。

「箱崎さんそのものを書くわけじゃないから安心して。新人の編集者さんの目線で話を書いてみたくなっただけだから」

「編集者……ですか」

「うん。出来れば、オンとオフどっちも見てみたいけどね」

「オフって、プライベートで会うのはちょっと困ります」

「そうだろうね。まあ外で会うだけでも違うと思うから、そういう雰囲気を見せてよ。会うのは仕事の時間とか、お昼とかでいいよ。職場も近いから、そんなに手間にならないはずだし」

「そんなに暇じゃありません。というか、まず原稿をください。話はそれからです」

「いい返事を聞いたら、渡します」

「そうですか。先生のお気持ちはわかりました。うちで連載したくないということですね」

と、つい強く言いきってしまった。

この前、あんな態度をとったから、頭にきているとしても、私をからかいたいが為に、大事な原稿を渡さないなんてあんまりだ。

作家の先生なんて呼べたものじゃない。

大体、こちらからお願いしたとはいえ、うちの雑誌に掲載してあげているのに、どうして上から目線なんだろう。

私に権限ないけど、打ちきりだって、できるし。

違うか。相手が私だから、原稿を餌に只バカにしているんだ。

「失礼します」と、背中を向けた。