「未だにね、考えるんだよ。もし、あのとき、俺がそんなことをしなかったら、二人は今も一緒にいるのかなとか。さやさんの泣いてる顔は見ることなくて、どうしようもない俺とか知らずにすんだのかなって。たまにね、本当に、たまに。たまに夢に出てくるくらい。考える」
「……」
「なつめちゃんって、兄貴と本当は付き合ってるでしょ?」
不意打ちの質問に、すぐに頭が切り返せなかった。
「えっ?付き合ってる?いや、付き合ってるっていうか、いや、そういうわけではなくて。彼は仲のいい友人の一人で」
「ははっ。芸能人のコメントみたい。見てたら、分かるよ。仕事とか教え子って距離感じゃないもん。ていうか、なんで二人して、俺に隠してたの?」
これ以上、言い訳しても角が立つだけかもしれない。遥汰くんが、素直に話をしてくれたから、余計にそう感じてしまうんだろう。
心の中で先生に謝罪しながら、認めることにした。



