不機嫌な恋なら、先生と


「さやさん?」

なんとなく、そんな気がした。

「なんで知ってるの?」

「家庭教師してもらったときに、彼女の名前、聞いたことあったから。でも遙汰くん、たぶん勘違いしてるよ」

「勘違いって?」と、私を不思議そうに見る。

「先生の昔のインタビュー記事読んだことあるんだけど、そのときにね、言ってたの。大学生のときに、好きな子の為に小説を書いたんだって。

たぶん、時期的にさやさんと付き合ってた頃だと思うんだけど、ある意味恋愛小説とも言ってたから、彼女を思って書いたんじゃないかな?

そこまで思うってことは、彼女のことが大切だったからじゃないかな。じゃないと書かないよ。遊びじゃなかったと思う。先生なりに彼女のこと大事だったんじゃないかな」

「余計にきついね」と遙汰くんは呟いた。