不機嫌な恋なら、先生と


「兄貴も俺も母親似かな」とか「小さい頃、家族で旅行に行ったときね」と遥汰くんは私が聞かなくても、先生との思い出や家族のことを話してくれた。

同じ思い出を共有しているのに、時折、二人の記憶がちぐはぐでおかしかった。

遙汰くんは、ふわふわして軽い印象はあるけど、話しやすい話題を選んでくれているのが分かる。

そういうところでは、私に気を遣っているのかもしれないけれど、かしこまった様子もないから、すぐに親しみを覚えた。

先生が席を外すと、入れ替わりみたいにミケランジェロがドアから入って来た。

「あれ?」

首元にさっきはしてなかったデニム素材のつけ襟をしている。

「わー、可愛い。おしゃれだね」

「可愛いでしょ?これも手作りなんだよね」

「え?嘘?」

「いらなくなった服の襟を切って縫うだけだから簡単なんだ。他のもあるけど、見る?」と言うから頷いた。

携帯を出して、画像のフォルダからミケランジェロの写真を探し出す。

「これがいいかな」と言って思わずのぞき込むと、おでこがぶつかりそうになって驚いた。前のめり過ぎてしまったみたい。