「え……じゃあ……」
ちょっと考えてから言った。呼ぶなら、恋人しか呼べない愛称がいい。そして、先生の歴代彼女とかぶらない呼び方。
「りったん」と思いを込めて呼んでみた。
「……さすがに無理だな」
「え?嘘?ダメ? 今、すごい可愛い呼び方だなって思ったんだけど。じゃあ、りっくん?いや、りりたんとか?」
「……先生でいいや」とすごく素っ気ない。
自分から言ったくせに、あんまりだ。
近くのカフェでお茶をしてから、先生のマンションに戻った。
「お帰りー」と、遙汰くんが、若妻のように玄関に立ち迎え入れる。
「いっぱい作っちゃった。座って、座って」と、リビングに私たちを促す。
テーブルの上に並べられたものは。どれも美味しそうで、彩りもきれい。男の子が作ったものとは思えない。
「すごい」
「料理は得意なんだよね」
「へえ。先生とは大違いなんですね」
「そう。兄貴と大違い」
「はいはい」と先生は軽くあしらう。キッチンに行くと、飲み物を取ってきてくれた。先生はお茶で、私は少しだけならと遥汰くんと缶ビールを半分こにした。



