「先生。歩くの速いです」
「……」
「なんか怒ってます?」
少し歩みが遅くなり、ようやく先生の隣に並ぶ。
「怒ってるよ」
「なんでですか?」
「なつめが遙汰にいい顔するから。人が心配だからやめてって言ってるそばから」
もしかして先生。やきもち焼いてくれてるのかな。なんか意外すぎてすっごい可愛い。
「……何笑ってんの」
「嬉しくて」
そっと先生がポケットから手を出して、私の手を取った。ぎゅっと握り返して、繋がるから、嬉しかった。
「とりあえず、どこ行こうか」
「はい。先生とならどこでも」
「ていうか先生って言い方、いい加減やめて欲しい」
「え……」
「なんかぎこちないっていうか。なんか今更だけど、照れる」



