「へえ。おじょ高じゃん。
あ、そうだ、なつめちゃん、今日、俺がご飯作るからゆっくりしてていいよ。実は俺も夕食作ろうと思って買い出ししてきたんだ。一緒に使っていい?」
「え?あの?」と、床に置いていた買い物袋を拾い上げると行ってしまった。
「あ……あの。先生、一つ聞いてもいいですか?」
「ん?」
「なんで私を編集者として紹介したんですか?」
彼女ですよね?まさか私、ここまで来てやっぱり弄ばれていました。なんていう展開なんて求めてはいない。
「あいつ、ガキなんだよ」
「え?」
「人のものを取りたがる」
「……人のもの?」
「あんまり昔の話をするのは好きじゃないから言いたくないけど。昔、付き合ってた彼女に手を出されたことがあるから。あいつが家にいる間は彼女だって言いたくなかったんだ」
「……そう……なんですね」
「だから、あまり関わらなくていい」
はい、と言いたいようで言えないのは、嘘を吐く心苦しさと言うより、彼女と紹介してもらえない心細さかもしれない。
「あいつがこの家出て行ったら、ちゃんと彼女だって紹介するよ」
「本当ですか?」
「またなんか勘違いしてるんじゃないかって不安になったんだろ」
図星過ぎて黙ると、少し寂しそうに笑う。



