「初めまして。ミケランジェロです」と、私にミケランジェロの顔が見えるように近づける。

「可愛い。美人さんだね」

「でしょ?美人でしょ?」と頬にチューをするから溺愛してるのが伝わってくる。

「もしかして、それも一緒に住ませる気か」

「だって野良になんか出来ないでしょ。外に住めって言うのかよ」

「そうだけど。なんで俺んちで飼うんだよ。実家とかさ」

「大丈夫。猫トイレとか必要なものは送ってもらう予定だから」と得意気に親指を立てると、インターホンが鳴った。

「おっ。来たかも」そういうと、ミケランジェロが彼の腕の中でもぞもぞ動いて、飛び出した。廊下に出て行く。彼もそれを追おうとして立ち止まり振り返った。

「なつめちゃんだっけ?」

「あ、はい」

「編集者さんなのに、兄貴のご飯まで作るなんて感心だね」

言われてみると、ごもっとも過ぎて、ぎくりとした。だけど、先生は何でもないことのように、「前からの知り合いなんだよ。彼女が中学生のとき、俺が家庭教師してたから」と、説明した。

「え?そうなんだ。すごい偶然だね。地元って、どこなの?もしかして、実家が近かったりして」

「えっと稲毛の方です」

「なんだ。すげー近いじゃん。中学どこ?」

「あ、中学は千華学院」