「好きだよ」

すごくシンプルな言葉なのに、嬉しくて、嬉しくて、首を縦に振るしかできなかった。

先生はふっと笑って、「何その反応?」

「気を緩むと泣いてしまいそうで」

「いいじゃん。泣いた顔見せてよ」

「嫌です」

「本当に、昔から強情だよな」

「ごうじ……」と、言いかけた唇を先生が塞いだ。どうしていいか分からなくて、棒立ちになる。初めて知る唇の感触が恥ずかしいのに、心地よくもあった。

離れると、おでこをつきあわせて先生は訊いた。

「なつめは?どう思ってるの?」

「好きに決まってるじゃないですか」

「え? 何?」と、聞こえてるくせにわざとらしく聞き返す。

「だから、その……何回も言わせないでくださいよ」

「ずっと聞いてみたかった言葉なんだから、聞かせてよ」

「……きです」

「……」

「好きです。先生、もう帰りましょう。私、今日ダメです。なんか緊張がとけたら気持ち悪くなってきました」と、誤魔化して帰ろうとしたけど、先生にあっさり掴まってしまう。

「あっ……あのですね」

「うるさい」

そう言って、先生は私にまた唇を重ねた。