「なんでだろうな。
嫌な女って思ったけど、バカみたいに真っ直ぐなとことか、弱いところ見せないようにしてバレバレなとことか変わってなくて、なつめだなって昔を思い出して見ていたせいか、段々近い存在に感じるようになった。
なつめに触れたくなるし、俺のものにもしたくなる。
なんでだろうな」

「え?」

「だから、思った。なつめが、俺との過去をなかったことにしたいなら、それでいい。今、進めるなら過去は関係ないなって。だから、再会じゃなくて初めましてから始めてもいいかなって、思ってた。けど――あの時の約束ってまだ有効?」

「あの時の約束……」

そう言われて浮かんだのは、中三の冬、告白をしかけたときに、先生の『俺が言うから』って止められた言葉だ。

「ゆ……有効です」

伝えるとどうしてか、涙が込み上げてきそうになる。さっきとは違う感情を持って。

「あのとき言えなかったこと、言わせて。あの頃と同じ気持ちじゃないかもしれないけど、伝えたい言葉って結局、同じにしかならないのが不思議だけど」

腕の力が弱まって、私は少し先生の身体から離れ、見上げた。