「いいえ」
机の上に邪魔にならないように置くと「箱崎さんのは?」と言った。
「え?」
「休憩するから、一緒にどう?」と、ようやく私を見た。
「あ、じゃあ」と、言って自分の分を用意している間、先生は別の椅子を持ってきたのか、そこに座っていて、先生の椅子に私が座るから変な気分だった。
「どうですか?」
「うん。やっぱりロキソニン飲んだからか、熱は下がってる感じがして、調子がいいよ。進みもいいし」
「ならいいですけど。まだ書くんですか?」
「うん。ようやく進んできたから。彼女の気持ちがようやく掴めてね。書きやすくなった」
「彼女の気持ち?」と、一瞬ドキリとした。まるで恋する人のような言葉だから。
「ああ。主人公の」
「あっ、主人公ですか。キャラの気持ちが、わかんないってこと、あるんですね」
「うん。普通だったら、キャラの性格とか決めてから書いてるんだけど。この話は前も言ったと思うけど書いて決めてく感じだから。書いてて自分でも思ったようにいかなかったんだ」
パソコンに目をやる。
「あれ?」
私は思わず漏れてしまった声に、口元を押さえた。
「どうした?」
「あ、いえ……」
「なに?」と探るような目に負け白状してしまう。



