それから疑問に思う。先生は本当に私を観察してるのだろうか。
こういう風に抱きしめたりすることが、本当に物語に活かされているのかなって。
例えば、先生に好きな人がいたとして、その人に報われない恋とか別れた未練がある。
その寂しさを埋める代わりのようなものだったら……嫌だな。
触れたいのに、触れてほしいのに、矛盾している。
互いの体温が違うのと同じで、気持ちにも温度があるみたいだ。声や話し方や触れかたで計れるもののような気がした。
だから好意的な感情がどちらかにないと、一方は触れることが気持ち良くても、もう一方はそれを切ないと思うこともある。
こんな感じで。
突き詰めるだけ、無駄だ。
気持ち、切り替えよう。
洗い物を終わらせると、何もすることがなくてテレビを眺めたりしていた。時間の流れがすごく遅かった。
しばらく待ってから、ジンジャーティーを淹れて書斎の扉をノックする。
「はい」
「入っても大丈夫ですか?」
「うん。どうぞ」
「休憩しませんか?紅茶にショウガすって入れてみたんですけど、飲めます?」
「ああ。ありがと」とパソコンと睨めっこしたまま先生は言った。



