あのクリスマスの日から、私はひとつ決意したんだ。

その頃の嫌なことは、忘れることにしようと。からかわれてたとしても、今の私と先生には関係のないことだと。だからやっぱり考えないことにした。

その代わり、先生の締め切りは年明けてすぐだけど、小説は進んでいるかなと、別のことを気にした。

実家を出て、帰りの電車の中、先生にメールを送った。

『あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。小説の進み具合はいかがでしょうか?』

しばらく待ってみたけど、返信はなかった。

先生の実家も同じ市内だった。もしかしたら、ゆっくりこっちで過ごしているのかもしれない。

『全く進んでおりません』

最寄りの駅に着いたと同時に、あけましておめでとうの一言もなく、それだけ送られてきた。

「え?」

沙弥子さんは、先生は締切を守る神作家だとあがめていたから、何の心配もいらないものだと思い込んでいた。

私が返信に迷っていると、『年明けから熱が出て、最悪の正月です』と続けてくる。

「嘘」

『先生、ご飯、食べれてますか?』

『あんまり』

『お見舞いに行っても大丈夫でしょうか?』

行先を先生のマンションに変えて向かった。食べたいものを聞いたけど、ないというから、消化に良さそうなものを適当にスーパーで選び購入する。