彼女の夢が叶った瞬間に立ち会えたことがすごく嬉しかった。
諦めたら、この瞬間はなかったんだと思うとひとしおだった。
花愛ちゃんが離れると、いつの間にか隣にいたヒカリさんが「何涙ぐんでんの?」と、言った。腕組をして呆れたように。
「あ、はい。なんか嬉しくて」
その一言で意味が伝わったみたいで、そうと短く相槌を打つ。
「周りのこと何も考えないし、軽率な行動だと思ったけど……まあ、頑張ったわね。あんたにしては」
「……はい」
本当にそうだ。
こんなに一生懸命になったこと、なかったかもしれない。この仕事を始めてから。
とりあえずこなさなきゃって思いでいっぱいで、服を買うみたいに、形だけ入ろうとして、気持ちが着いてきていなかったんだ。
こういうこと届けたかったんだって、雑誌でも文芸書でも変わらないんだって、共通する思いがあることをようやく見つけられた。
そこに私のやりたい意味があるんだ。
「ヒカリさん、これからもよろしくお願いします」
「改めて、何?足、引っ張んないようになりなさいよ。早く」
ぶっきらぼうに言う、ヒカリさんの目にも少し涙が滲んだのは、みんなで記念撮影をして、花愛ちゃんに花束を渡した時だった。



