撮影が始まった。
花愛ちゃんにほどこしたメイクはナチュラルで本来彼女が持っている美しさが際立つ。
前髪をかき上げて笑う彼女は、思ったより、リラックスしていて、まるで草原の中にいるみたい。
私はサイドから、カメラマンの「せーの」のタイミングで羽根を投げていた。
それが舞う中、口角をあげたり、キメ顔を作ったりしていたけど、時折聞こえる「あら。いいじゃない」「あたしもあそこで撮ってもらおうかしら」なんていうKAMAさんの声が聞こえて、大爆笑する和やかさも手伝って、自然な笑顔に変わっていく。
次のカットに移る間、花愛ちゃんは横にいた私におずおずと声をかけた。
「箱崎さん」
「お疲れさま。あっ、何か飲む?」
「いいえ……あの……今日来て良かったです。
こういう髪型してみたかったし、本当はずっと前髪をあげてみたかったし、服だって自由に着たかったって、わかりました。
でもそれはこの現場だから出来ることであって、これが世間の目にはどう映るか考えると、まだちょっと不安ですけど、今日はとても楽しいから、やっぱり来て良かったです」
「うん。私もだよ」と、顔をもう一度見合わせると、笑顔になった。



