「そっ、そう?」

「うん。いつも可愛いけど、綺麗な感じ」と、背中を押されると、少しだけつま先立った気持ちになる。

メイクひとつでこんなに気分が変わるものだから驚いた。

身を持って体感すると、読者に情報を発信するということの大切さを実感する。

こうして私みたいに少しの自信を持ってくれる人がいるものだと思うから。

そのまま花愛ちゃんのメイクが始まる。今日は三つのカット撮影で一つ目は部屋の中でゆったりしているようなリラックスしたイメージ。

前髪をクリップでとめると露わになるおでこ。自然と痣に目は行くけど、やっぱり花愛ちゃんは綺麗だなと思った。

「じゃあ、さっさとやっちゃうわよん」

「はい」

「肌綺麗ね。きめが細かくて、整ってる。ノリがいいわ」と、KAMAさんは歌うように言う。

「若さよね。あたしも大学生の頃はもっとみずみずしくてね。まあ、今でも綺麗だけど。あの頃のあたしは、水をまとう蝶だったわ」

その例えが果たして綺麗なものなのか、溺れる蝶が浮かんでしまい、なんとも言えない。

花愛ちゃんもそうだったのか、ただ苦笑いしていたので、「じゃあモテて大変でしたよね?」と、持ち上げてみた。

「そうねぇー。モテないと言ったら嘘になるけど。でもまあ、あたしにはもう何年も心に決めた人がいるから」

と、照れ臭そうに頬に手を当て何か思い出したように目を閉じるから、花愛ちゃんは、だんだんとおかしくなってきたみいで、笑い始めた。

「あら、急に何かしら。小娘」

「い……いいえ。羨ましいなと思って」

いい雰囲気。もう大丈夫だ。そう思ったのはきっと、私だけではない