花愛ちゃんが衣装合わせを行っている間、KAMAさんは私をじっと見つめていた。

「な……なにかありましたか」

「あんた、どブスね」

「……はぁ。すみません」

「なんでそんながちゃがちゃなメイクが出来るのかしら。いらっしゃい」と、メイクルームの鏡の前に座らせると、有無を言わさず、私の顔にメイクを施していく。

「アイラインが、がたがたよ。ひどいわね。顔面が可哀そう」

「す……すみません」

謝りの言葉を連続していると、あっという間にメイクが終わって、さっきより落ち着いた目元に変わっていた。全体的に、大人っぽくなったようにも見えて、いつもとは違う雰囲気に、何度も確認する様に鏡の自分を見てしまう。

「ところで、さっきのあの人誰よ?」と、私の顔なんかどうでもいいのか、KAMAさんは私に囁くように聞く。

「あ……えっと……私の知り合いで、見学に来てます」

小説家と言ってはいけないと思い、ざっくりした返答をしてしまう。

「あんたの知り合いなのね。へえ。もしかしてお付き合いとかしてるわけ?」

「ち……違いますよ」

「あら、そう。あたしこういう勘は当たるのよね。そういう雰囲気に見えたけど。まあ付き合ってないならいいわ。あの人、彼女はいるのかしら?」

「い……いないそうですけど」

あらそう。やっぱりこれはやっぱり運命ねと呟くと、「じゃあ、今度、あたしのお店に遊びに来なさいよ。あ、あんた一人はダメよ。あの彼も一緒に。サービスするわよ。ところで彼の名前は……」と、ぐいぐい情報収集をされてしまう。

変な汗をかいた頃、花愛ちゃんはメイクルームに戻ってきた。着心地の良さそうな白いオフショルダーのニットワンピースを着ている。

私を見て、「箱崎さん、可愛い」とほころばせた。