「あ、でもそれなら……事故ってことも」


ふとそう思って、驚いて出てしまった言葉を慌てて取り繕う。


よく漫画とかではあるから、そういうすれ違い。

たまたまその男子が迫ってきて亜美さんが避けれなかった、とか。

もしかしたら、それで別れちゃった可能性だって……


「残念ながらそれはないよ。

俺がドアにぶつけて二人に気づかれたとき、亜美に『柊ってスペックはめちゃ高いけど思ったよりも中身ないし、つまんないんだもん。もっと楽しい人かと思ってた。
もう飽きちゃったごめんね?』って思いっきり振られてるから。

だからまあ、結果的には浮気っていうよりも乗り換えられたって感じ」


言わなきゃ、よかった。
取り繕うなんて下手な真似しなきゃ良かった。

こんなの五十嵐くんに余計辛いこと言わせてるだけじゃん。

無理に笑う五十嵐くんが痛々しくて見たくなんてないのに、むしろ私がその原因を作ってしまっている。

最低だ、私。
こんなこと言わせたいわけじゃないのに。

私の、バカ。どうして後先考えずにこんなこと言っちゃうの。

悔しくて苦くて、下唇を噛んだ。