あ、それならっ!
「覆水盆にかえらず、だよねっ」
勢いよくそう答え振り返ると、
「そう、正解っ……」
「っあ、」
すぐ鼻先にあるにあった五十嵐くんの整った顔。
薄く色付いた唇が数センチ先にあって、慌てて目をそらす。
「あの……っ!ごめん」
「いや、俺の方こそ」
顔を背けてもまだ、顔の熱が引かない。
息が、つまりそう。
『それじゃあ柊が有紗ちゃんにキスすればいいんじゃん?』
ああもう!
さっき晴仁くんが変なこと言ったから!
変に意識してしまうじゃないか!
そんなこと、ありえないってわかってるのに。
現実には起こらないって頭では理解してるのに。
こんなに顔が近づいたらどうしたって意識しちゃって心臓がおかしくなる。
ああもう、お願いだから。
どうかこの胸の鼓動も顔の赤さも、五十嵐くんに気づかれませんように。


