「え、」


まともに答えることも、目を合わせることもできなくなってしまう。

そして、なぜか少しうるさくなる私の心臓。


風の吹く音がやけに大きく聞こえた。

「いや、たいしたことしてない、し」


ようやく、しどろもどろになって答えると、もう一度私の方を向いて笑う五十嵐くん。

今度はいつもと変わらない爽やか笑顔。

本の一瞬だけの、それでもいつもと違う五十嵐くん。

五十嵐くんも、あんな笑い方するんだ。