「今日ね、向こう行ってきて…この資料を是非見てほしい」と私は言って龍に資料を渡した。

「何ですか?これ」と龍が不思議そうに聞く。

「私はいいと思うんだけど…あなたの意見を聞きたくてね」と私が言うと、龍は黙って資料に目を通してくれた。

「龍…あなたはどうして恋人作らないの?」私は何故かそんなことを言ってしまった。

「いたらどーします?俺、興味無いんっすよ!あなたと蒼介と飛鳥以外に…」

なんてマジに返してくれるこの人…。

私は龍のこーゆうところが好きだなって改めて思う。

「俺より、オーナーはどうなの?」って真剣な顔で聞いてくる。

私!?考えてもいなかった。だって…私は仕事一番で…みんな大切。

そんな答えじゃ納得してくれないよね…うん。わかってる…けど…龍も同じってこと!?

もしそうなら私…かなり不愉快な思いさせたかも…。

頭の中でグルグルそんな思考が回る。

そしたらいきなり、龍に壁ドンされたー

思わずドキッとする。

「どう?ときめいた?」なんて言いながら笑みを浮かべてる。

けど…目はそんな優しいものではなく、もっと鋭く、完全に囚われている。

「もぅ、急にしないでよ!」と私は言いながら目線を外した。

「オーナー、本題入ってよ。ほんとはこれだけで呼んだんじゃないでしょ?これはついでの話なんじゃないの?」と龍は言う。

けど…壁に両手をついたまま、私を開放してくれる気配はない。

「この体制で話続ける気?」と私が言えば、

龍は諦めたように退いてくれた。

実はね…私は龍に研修合宿の話をした。

龍はしばらく考えたあと、そっかと一言いった。

「良かったですね。さすがオーナー!俺、オーナーと一緒に仕事出来て嬉しいっす」と龍は言った。


「そういってもらえると嬉しいわ。ありがと」と私は心から感謝した。

「けど…蒼介のこと甘やかし過ぎですよ!いくら大事だからって…。俺だって、オーナーにあんなことされたいし…」と照れるように言う龍。

は?あんなこと!?何よそれ。

「俺、オーナーが好きっす。けど…オーナーの一番は蒼介でしょ?」と龍は言ってくる。

龍…私は、蒼介もあなたも大好きなんだけどな。

「男に囲まれて仕事してるから気づかないんですか?惚れられてるって。それともマジに興味無いんっすか?」と龍は言ってくる。

「龍…急にどうしたの?」と私は聞いてみる。

「不安でたまらない。ほんとはオーナーを独り占めしたくて…。無理なのはわかってる。けど…俺の女になるきは無いよな?」と龍に言われた。

返事できるわけない。

けど、龍の顔はマジで…。

「そうね。私は仕事が一番大事だから」と私は言うしかなかった。

龍、私のこと好きだったの?初耳なんですけど…。

「ホストは恋人作っちゃいけないなんて暗黙の了解で決まってるじゃないですか…」と龍は言う。

「そんなことないわよ!ウチのクラブではOKだし…まぁそうなれば彼女が嫌がるからなんだろうけど…」と私は言った。

「いいんだ…」と龍はボヤいた。

そうだよねー普通はホストの彼氏とか嫌だもんね。

女子としては…(笑)けど、どうなんだろう?誰かいないのかな…

なんてね。こらこら私。何考えてんのよ!!

「龍だって人のこと言えないくらい蒼介のこと好きじゃない!!私、最初、もしかしてそっちの人?とか思っちゃったじゃん」と言ってやれば、苦笑いしてた。

「そうだよね。俺、ほんと、蒼介大好きだし…蒼介追いかけて辞めたからなぁ~」と龍は言った。

うん。私が辞めさせた訳じゃない!!

「あの浩也?って刑事はオーナーのこと好きで口説いてたよな?」と龍は言う。

私は頷いて、「そうだけど…何?」と言えば、別にと返されてしまった。

「龍さぁ、モテるし女性の扱い上手いのに、恋愛は不器用なの?」と私が言えば、かもしれないと言ってくる。

けど…ちゃんと考えて会話してくれてるのはよくわかるだからキライにならないんだよな。

ふと会話が途切れたところで時計を見る。

嘘!?もうこんな時間?

「龍、酔ってない?大丈夫?そろそろクラブ向かわないと…」と私は言って適当に会計を済ませた。

龍は後を追って店から出てきた。

「早くのって」と私は車に乗ることを促した。

運転席に座る私、助手席に座った龍。

私たちはシートベルトを締めると車をゆっくり走らせた。

「資料は飛鳥に渡すわ。このプログラムについてはあなたから報告を…。それと…研修合宿のことは私から今日伝えるから」と私は運転しながら用件を伝えた。