「瑞希さん、俺は、店長と蒼介さんとの関係についてお聞きしたいです」と飛鳥は言った。

「わかったわ、飛鳥には話してなかったものね。蒼介と龍は元々同じクラブだったの。当時No.1だった龍が入って日も浅かった一番したっぱの蒼介を可愛がってたのが先輩たちには気にくわなかったらしくてね…龍を呼び出して理由を聞いていたときよ。自分のことを言われてるって気づいて苦しくなって蒼介飛び出しちゃったの。そして、ぼこぼこ。たまたま私はその近くを偶然通って助け出したの。そしたら翌日、龍はキレないから蒼介を。ってクビにされてね…私がなら、うちに来ないかって引っ張ったら、今度は龍が、辞めるって言い出した。そして、ウチに来たい、そういうから彼を店長として迎え入れたのよ」

と長々と説明すれば

「そうでしたか。だから龍さんも、蒼介さんも瑞希さんのことを大好きなんですね」と飛鳥は言った。

蒼介は頷いていた。

「ゴメンね?長々と…疲れたでしょ?もぅ、寝なさい。私はもう少し資料に目を通してから寝るから」と私は言って灰皿でタバコの火を消した。

「では、お休みなさい。おきをつけて行ってきて下さい」と飛鳥は言うと蒼介を連れて去って行った。

私はしばらくして寝た。

翌朝ー

シャワーを浴びて髪の毛をセットする。そして、スーツに着替えた。

軽く朝食を準備して二人がまだ眠っている間に静かに家を出た。


飛行機はチャーターしてある。そこまでは手配した車で向かった。

大きなビルに着き、ビビりながらも深呼吸して中に入った。

ーコンコンー

ドアを鳴らした。中からどうぞと聞こえ中に入った。

「よく来たな。もう少し待ってくれ、やつもくると思うから…まぁかけて」と言われたので、私はソファに座りながら、ヤツを待った。

ヤツって誰だよ!って心で突っ込みを入れながら。

ヤツが現れた。

徹!?何であんたが…。

ヤツこと、この方、徹。私の学生時代からの親友で、元ホスト仲間。同じクラブで競い合いながら、共に働いていた。

そんな徹が何故ここにいるのだろう?私の頭には疑問符…。

そして、徹も同じく私を見て固まってる。

「二人とも、よく来た。改めて…並んで座ってくれ。報告がある」と言われて私は座り直し、徹は私の横に座った。

「単刀直入に用件だけを言わせてもらう。今日ここに呼んだのは…瑞希に研修合宿の講師を努めてもらいたいからだ」と言われた。

研修合宿というのは…講師を迎え、合宿と言うなの、お勉強会みたいなもので、多くのホスト業界で仕事をするヤツが全国から集まり、交流する会のこと。

ホストとして誰もが憧れる講師と言う大舞台。

もちろん私もその一人。

そんな舞台に私が立ってもいいのだろうか?

歴代の講師は、経験豊富な年上の男性ばかり。

経験の浅いましてや、女である私が受け入れられるとは到底思ってない。

そんなことが顔に出ていたのだろうか?

私を呼び出した彼は私に笑顔を向けた。

「言いたいことはわかってる。けどそれ以上は言うな。確かに、お前を批判してきたやつも少なくはない。けど、伝説のNo.1ホストで史上最強異端児のお前は斬新で新しい風を吹き込むとも言われてる。そして、お前の授業を心待ちにしてるやつも多いんだ。だから存分に発揮してくれ。ちなみにお前に拒否権はないよ」

と笑われた。

なるほど…私もやっぱり批判されたか…。そうだよね…。そんなことわかってた。けど、少し悔しいな。

「大丈夫だ。お前を推したのは俺だけじゃない。お前を一番押してくれたのは、ここで理事を努めるあのお方だ。おかげでみんな合意した。それでな、徹の役目は…講師補佐だ。お前ら仲は良いだろう?瑞希が頼れるのはお前だと思ったからな」

と言ってくれた。

嬉しい。あのお方が私を推してくれたなんて…俄然やる気になった。

あのお方とは、私が敬愛する、私が初めてこの研修合宿に参加したときに講師を努めてくれた方だ。


「徹、よろしくね?思いきり気張るから」と手を差し出すと、

「もちろん。よろしく、せんせ」と徹は言って私の手をしっかり握り返してくれた。

「日程は…来週から。詳しい資料は各自のパソコンに送る。ホテルなんだが…二人部屋でお前ら一緒なんだけど…そこは勘弁してくれよ?」と言われて

私と徹は頷いた。

「理事を呼ぼうか…」と彼は言って理事がすぐに来てくれた。

「お久しぶりです」と私が頭を下げれば…

笑いながら、「元気そうだね」と声をかけてくれた。

「おかげさまで。私を講師として推薦していただいたみたいで…ありがとうございます!!」と言えば、

「私が見る限り、キミが適任だと感じたからなんだよ!頑張ってね。それと…この資料、目を通しといて貰えるかね?この業界を担う若手の育成プログラムなんだが…是非業界トップの成績を誇るキミのところで考えてもらいたい」と言われて資料を手渡された。

なるほど…ウチに研修生としての受け入れか…悪くないかも。

「あの…悪くないと思いますが、持ち帰ってウチの仲間と相談しますね。結果は…メールで送ります」と私が言えば、

「そうしてくれるとこちらまありがたい」と言ってくれた。

私たちは軽い談笑をして、挨拶をして帰ることにした。

戻ってみたら意外と早くに家に着いた。

まだまだ時間は充分ある。

私は先に浩也さんに連絡した。

浩也さんは私が学生時代からお世話になってる刑事で、どうやら、私のことが好きだとずっと言ってくれている。

カフェで浩也さんと逢い、今回のことを話した。そして、私が店をあける間にやつらが動くかもしれないからそのときはよろしく頼むとお願いした。

浩也さんは任せとけと力強く言ってくれた。

私たちはそれぞれにカフェを後にした。

そして、私は今度は龍に連絡した。

「龍?今から少し逢える?二人で話したい」

と私が言えば、すぐいきます!!と
返ってきた。

私たちは立ち飲みバルで私はソフトドリンク、龍はカクテルを飲んでいる。

って、昼間から飲めないからね、私たち…って私が車だからノンアルにしただけなんだけど龍は飲んでるし。

けど、あえてそれは言わない。