私は中々口を開けない…。

やっぱり言うことに、抵抗がある。

ほんとは気にすることは無いんだと思う。

今までだって色んなこと話してきた。

もちろん、恋人がいたこともある。

それを否定されたことも、嫌み言われたこともない。

むしろ、応援してくれてた。だから今回だってそう思う…。

けど…あれから何年?私はいい年の大人になってる。

これからのことも考えていい年だ。

けど…仕事がやっと軌道に乗って安定している今それを考えることなのか…?

私を慕ってくれるクラブの皆は…?

知ったら絶望される?

私の元を離れていく?

そんな不安が拭えない。どーしたらいいのか、わからない…。

そう思うとやっぱり中々すんなりとは言葉が思いつかない。

『瑞希さん…?どうかされましたか?』と優しい声色で聞いてくれた飛鳥。

私が何も言えないのに急かすわけでもなく、私の言葉を待ってくれている。

「あのね…」意を決して私は口を開いた。

「少し相談があるの…。どうしてもあなたに聞いてほしくて…」と私が言うと、

『わかりました。二人とも今は近くにいませんから…安心して話してください』

そう返してくれた。それだけでホッとする。

やっぱり飛鳥ね…。私のこと、よくわかってる…。

「実はね…インターン候補に選んでる翔さんのことなんだけど…面談かねてデートしてきたの」と私が言うと、

私の気持ちを察したのか、

『そうですか…その方とはお付き合いしたいとお思いですか?』とナゼか言い当てられてしまった。

「もちろん、ホストとして魅力的な男性なんだけど…顔も性格も考え方、声も全てタイプで、また一緒にデートしたいとか思ってしまったの…。その事は彼にも伝えたし、承認済みなんだけど…」と私が言うと、

『なるほど~そーゆうことですか。瑞希さんがそこまでおっしゃると言うことは中々の方ですね。俺は応援しますよ?』と言ってくれた。

やっぱり…飛鳥ならそう言ってくれる気がした。

『で、何をお悩みですか?』と聞いてくる。
私は何も言ってないのに…。

「彼をインターンとしてウチに呼ぶことよ」と私が言うと、

『考えを教えて下さい。思ってること全て…大丈夫です。俺しか聞いてませんから』そう優しく、私を誘導してくれる。

「もし、これからホストを続けるならいい経験になると思うの。もちろん、ウチに引き抜くことも考えたわ。けど、すぐにって訳でもなくて…私のビジネスパートナーとしてそばにいてくれるほうが嬉しいなぁって。けど…こんなこと言えないから」と私が言うと、

『なるほど…。いいと思います。心配なのはクラブのスタッフのことですか?瑞希さんを慕う方も多いですし…自分のもとを去られたらどーしよ?とか絶望されたら…とかそういった不安ですか?』と飛鳥は言った。

なぜこうも私の気持ちがわかるの?

「うん。龍なら応援してくれるかも知れないけど…蒼介は…暴れそうじゃない?」と私は言った。

『確かに…暴れそうですね。けど…瑞希さんなら沈められるでしょう?』と飛鳥は言った。

沈める…ねぇ~まぁ。

なんとかなるだろうけど!

こら、そーゆう問題じゃない!

『冗談ですよ。けど、誰よりも寂しがりで甘えん坊な蒼介さんですよ…?特別扱いしてあげないと、拗ねます』そう飛鳥に言われると、本気でそう思う。

確かに、今までもそうしてきたな…。

「ありがとう。なんか少し楽なった」私はそう言った。

『いいえ。いつでも何でも言ってくださいね』と優しく飛鳥は言ってくれて私は電話を切った。

そして夕食ー

今日は夜景の綺麗なレストランで徹とお食事をする。

まぁ、1週間が過ぎてのお互いの仕事についてを話すだけなのだが。

「頑張ったのになぁ~落とせなかったか…」と徹は独り言のように言った。

私は苦笑いしか出来ない。