まだ陽は高い位置にある。


街路樹のセミが金切り声を上げてる。


暑さのせいか、足が鉛になったみたいに重い。

とぼとぼと歩いていると、ポンッて誰かに肩を叩かれた。

振り返ると、大野先輩が白い歯を見せてにっこり微笑んでいた。


「どっか行くの?」


そう質問されて、ふと思いついた。

そうだ。

直接あたしが出向かなくて、大野先輩にお願いするって手もあるよね。

あたしは手にしていた紙袋を差し出した。


「あの……これ。カジ君に渡してもらえますか?」



大野先輩は紙袋を受け取りながら中を覗き込む。


「それで……あの。あたしサークル辞めようと思ってて……」


そこまで言うと、大野先輩が驚いたようにパッと顔を上げた。


「え? なんで?」


「なんで……ってその……」


その瞬間、視界がぶわって歪んだ。

涙がこぼれそうになる。

誤魔化せそうにない。

そう思ったあたしは、昨日の出来事と、今の気持ちを大野先輩に伝えた。